子供たちに伝えることができることは 〜職場体験や地域学習を通じて考える〜

 教育改革の中「総合的な学習の時間」が新教育課程にも導入され、地元の雷山小学校でも地域での職場体験、地域学習が実施され、私の寺でも年二回ほど児童を一日から二日間受け入れています。
 今までは、教育も学校内での授業だけに終わっていましたが、広く学校の外に出て、様々なことを体験し多くのことを学ばせることが目的です
 雷山小学校では「自分たちが生れ育ったふるさとを大切にしていく郷土愛と、いかなる社会においても共に助け合って生きていこうとする態度を養成することは、二十一世紀に生きる子供たちには不可欠だ」との理念のもとに「ふるさと『雷山』に学び、共に生きる子供を育てる教育の創造」を主題に掲げて、「ふるさとのよさを感じる感性を高める」「地域の人や友達と協力しあって、活動する共同性を養う」「ふるさとのよさを深く認識する」「住みやすい雷山づくりに取り組む実践的態度を身につける」の四点を目的に掲げ職場体験、地域学習が実施されています。
 この理念を生かすために子供たちをどのような立場で受け入れるかということは重要なことですが、それだけに限定しては寺という宗教的環境に子供を受け入れる意義は充分とは言えません。生命の尊厳や心の教育をどのように子供に伝えればよいか、大きな課題です。
 憲法第二十条の第三項には「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」とあり、教育基本法第九条第一項には「宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない」第二項には「国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他の宗教的活動をしてはならない」とあります。
 子供を受け入れるまえに、先生方と教育基本法の捉え方について話し合いました。結論は特定の宗教の教義を子供たちへ伝えることは差し控えてほしいが、第一項に掲げる部分は積極的に子供たちに語りかけて欲しいとのことでした。心の大切さや生命の大切さは学校でも伝えているが、寺という宗教的環境の中で、子供たちに語りかけてほしいとの要望が先生、そして父兄の方から出されました。このことは正直意外でしたが、大変嬉しく思いました。
 小学生も低学年と高学年では話す内容も違いますが、子供たちにお寺の役割が@生命の大切さ、心の大切さを伝えるA歴史、文化を後世に伝えることの二点であり、なおかつ@とAがつながっていることを理解してもらうよう、取り組んでいます。その一端を紹介します。
先ずお堂で読経の後に、参拝の方々との対話から始めます。参拝の方々も最初は驚かれたようでしたが、子供から何故お寺にお参りに来るのですかの質問に、参拝の方が丁寧に答えて下さるのは微笑ましいものです。次に境内の掃除です。学校でも掃除はしているわけですが、境内の木々や池を眺めながら取り組むせいなのか、子供たちから「家や学校での掃除よりも楽しかった」との言葉が出てきます「心が洗われたような気持ち」を子供が持ってくれたのではないでしょうか。
 さらに多くの方が、どんな思いで寺にお参りされているか、また世の中で起こっていることに対しての私の思いを話しながら、心の大切さや思いやり、生命の大切さを子供たちに語っていきます。
そしてAに移り、お寺の歴史や文化を後世に伝えることの大切さを仏像、古文書、宝物、寺内散策等を通じて伝えていきます。このことは私だけではなく、多くの関係ある人々の応援があって初めて可能であることを教えるために仏師さんや宮大工さんにもお話しをお願いします。
 また歴代のご住職や多くの方々の努力で今の寺の姿があることを子供に理解させると共に「おじいちゃん、おばあちゃん、遠い先祖のお陰、そしてまわりの人達のお陰で今があることを忘れないように」と語り、お寺と同じように家庭のなかにもそれぞれの歴史があり、先祖の皆さんの苦労によって今があることを理解させるよう努めています
 どれほどの成果があったのかなと不安になることが多いのですが、学校からは評価を受け、父兄からは子供の姿勢に変化が現れてきたとの声を聞くようになってきました。
 年数回のささやかな取り組みですが、地域の子供の成長に役立っていることは有り難いことです。
 特に公教育の場での宗教の位置付けは難しい点があるかもしれませんが、私達が教育の現場に関わる役割は重要であると考えます。